口腔粘膜疾患
お口の中にできものが出来たとき、多くの方は「きっと口内炎だろう」と思って放置しているのではないかと思います。
しかし一方で、「口内炎だと思っていたら口腔がんだった」という有名人の事例がテレビなどで取り上げられたこともあり、不安に思われている方もいらっしゃるかと思います。
お口の中の粘膜に出来る「デキモノ」は、口腔粘膜疾患と呼ばれ、口腔内の粘膜に影響を与えるさまざまな病気や状態を指します。
これらの疾患は、口腔内の健康に重大な影響を及ぼし、時には全身の健康にも関与します。
この記事では、口腔粘膜疾患について詳しく解説します。
口腔粘膜疾患の種類
口腔粘膜疾患は非常に多様であり、以下のように分類されます。
1. 感染性疾患
ウイルス性疾患
ヘルペス性口内炎:単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる疾患で、水疱や潰瘍が口腔内に現れます。
水痘・帯状疱疹:水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、口腔内にも水疱や潰瘍が現れることがあります。
細菌性疾患
壊死性潰瘍性歯肉炎:細菌感染によって歯肉に潰瘍や壊死が生じる疾患です。
口腔結核:結核菌による口腔内感染症で、結核患者に見られることがあります。
真菌性疾患
口腔カンジダ症:カンジダ属の真菌による感染症で、白色の斑点が口腔内に現れます。
2. 免疫関連疾患
扁平苔癬:自己免疫反応によって引き起こされる慢性の口腔粘膜疾患で、白色のレース状の斑点が特徴です。
尋常性天疱瘡:免疫系が皮膚や粘膜を攻撃する疾患で、水疱や潰瘍が口腔内に現れます。
3. アレルギー性疾患
接触性口内炎:特定の物質に対するアレルギー反応により、口腔内に炎症が生じる疾患です。
4. 栄養欠乏症
鉄欠乏性貧血:鉄分の不足により、口腔粘膜が炎症を起こすことがあります。
ビタミンB12欠乏症:ビタミンB12の不足により、舌の炎症や口内炎が現れます。
5. その他
アフタ性口内炎:原因不明の再発性口内炎で、小さな潰瘍が口腔内に現れます。
白板症:白色の斑点が口腔内に現れ、前癌状態とされることがあります。
口腔粘膜疾患の原因
口腔粘膜疾患の原因は多岐にわたります。以下に主な原因を示します。
感染症
ウイルス、細菌、真菌などの病原体が口腔内に感染することで発症します。
これらの病原体は、免疫力の低下や口腔内の環境変化によって活性化することがあります。
免疫系の異常
自己免疫疾患や免疫抑制状態により、免疫系が口腔粘膜を攻撃することがあります。
また、免疫力の低下により、通常は無害な病原体が口腔内で病原性を持つこともあります。
栄養不足
鉄やビタミンB12、葉酸などの栄養素の不足は、口腔粘膜の健康に影響を与え、炎症や潰瘍を引き起こすことがあります。
アレルギー
特定の食物、薬剤、歯科材料などに対するアレルギー反応が口腔粘膜に炎症を引き起こすことがあります。
外的要因
喫煙、アルコール、刺激物質、機械的な外傷などが口腔粘膜にダメージを与え、疾患を引き起こすことがあります。
治療法
口腔粘膜疾患の治療は、疾患の種類や原因に応じて異なります。以下に代表的な治療法を示します。
感染性疾患の治療
抗ウイルス薬:ヘルペス性口内炎などウイルス性疾患には、抗ウイルス薬が用いられます。
抗生物質:細菌性疾患には、適切な抗生物質が処方されます。
抗真菌薬:口腔カンジダ症など真菌性疾患には、抗真菌薬が使用されます。
免疫関連疾患の治療
ステロイド:扁平苔癬や尋常性天疱瘡などには、ステロイドが効果的です。
免疫抑制薬:重症例では、免疫抑制薬が使用されることもあります。